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Sunday, September 6, 2020

フレッシュネスの新作バーガーに日本発“大豆由来”の代替肉が採用されたワケ - ダイヤモンド・オンライン

フレッシュネスバーガーが販売する「THE GOOD BURGER」は日本のスタートアップDAIZが開発する大豆由来の代替肉を採用した

Beyond MeatとImpossible Foods──。この2社が開発し製造する植物性の代替肉が、米国飲食店の食肉事情をじわじわと変え始めている。ケンタッキーフライドチキン、バーガーキングといった大手チェーンが導入するだけでなく、中小規模の飲食チェーンや個人経営のレストランでも、2社製の代替肉を使用するケースが増えてきた。

この“代替肉ブーム”は日本でも起こりつつある。カレー専門店チェーンのCoCo壱番屋は3月、大豆由来の「大豆ミートのメンチカツ」をトッピングメニューに加えた。同じく3月、モスバーガーは植物由来の素材のみを使った「グリーンバーガー」を販売開始した。

フレッシュネスバーガーもモスバーガーに続くかたちで、代替肉を使用したハンバーガーの販売に乗り出した。8月に販売開始した「THE GOOD BURGER」のパティには、日本発のスタートアップDAIZが開発する植物性の代替肉「ミラクルミート」が採用されている。

なぜフレッシュネスバーガーはDAIZの代替肉を採用したのか──。フレッシュネスバーガーを展開するフレッシュネス商品開発マネージャーの逆井里奈氏とDAIZ執行役員でCMOの広川学氏に、代替肉で成し得る“食の未来”の可能性について話を聞いた。

フレッシュネス商品開発マネージャーの逆井里奈氏(左)とDAIZ執行役員でCMOの広川学氏(右)

Beyond・Impossibleの代替肉は「美味しくなかった」

フレッシュネスの逆井氏は2019年8月、市場調査のために米国へと渡っていた。海外で話題だった代替肉を自社でも取り入れたいと考えていたからだ。代替肉の実食に心を踊らせていたが、その味には肩を落とすこととなった。

「市場調査のため、Beyond MeatやImpossible Foodsの代替肉を使用したハンバーガーをひたすら食べました。ですが味は正直、美味しくありませんでした」(逆井氏)

フレッシュネス商品開発マネージャーの逆井里奈氏

Beyond MeatやImpossible Foodsが製造する代替肉には、食肉の味を再現するために多くの添加物が使用されている。逆井氏はその人工的な味に違和感を感じたのだという。

健康や環境への意識が高く、流行に敏感なフレッシュネスバーガーの顧客に「代替肉は必ず響く」。そう確信していた逆井氏は帰国後、世界中から代替肉を取り寄せた。

米国、イスラエル、フランス、日本など、さまざまな国の企業が製造する代替肉を10種類ほど試食。結果、「これだ」と思い採用したのは日本のスタートアップDAIZが製造する大豆由来の代替肉だった。

「独特の癖がある代替肉が多いなか、DAIZのものが一番美味しく、味が決め手になりました。食感も、硬かったり、柔らかかったり、さまざまな代替肉がありましたが、DAIZのものは食感も表現が完璧でした。ほのかに残る大豆の香りも、日本人には間違いなく受け入れられると確信すると共に、代替肉に慣れ親しんでいるであろう外国人観光客にも、“日本らしい代替肉”として提供できるのは良いなと思いました」(逆井氏)

特許技術で食肉の食感・風味に近づけた発芽大豆が原料

フレッシュネスバーガーが採用した代替肉を製造するのは、熊本発のスタートアップ・DAIZだ。2015年設立の同社は、“大豆だけ”を使用した代替肉原料を開発し製造する。

DAIZが開発した植物性の代替肉原料を使ったパティ

大豆由来の代替肉は大豆搾油後の残渣物を主原料としているものが多く、DAIZがいうには、味と食感に残る違和感、大豆特有の青臭さや油臭さ、肉に見劣りする汎用性の低さなど、まだまだ課題が残る。同社は独自の特許技術で上記課題を解決し、人々が心から“美味しい”と思える代替肉を開発することで、本格的な普及を下支えしたいと考えている。

独自の特許技術とは、DAIZ最高技術責任者の落合孝次氏が発明し、大豆の食感や風味を本物の食肉に近づける「落合式ハイプレッシャー法」だ。

豆の発芽中に、酸素、二酸化炭素、温度、そして水分などを調整し、あえて厳しい生育条件にしてプレッシャーを与えることで酵素が活性化、遊離アミノ酸量が増加し、大豆のうま味を引き出す。また独自の膨化成形技術により、他の原料や添加物を何も足さずに肉のような食感を再現している。

原料には「穀物の大豆」ではなく、芽を出してアミノ酸、ビタミン、ミネラルが急激に増加した、「植物になった瞬間の発芽大豆」を使用。大豆のアミノ酸組成を変えることで、豚肉に近い味、魚肉に近い味、牛肉に近い味、といった具合に味の調整を行うことができるという。

DAIZは5月、農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)、三菱UFJキャピタル、岡三キャピタルパートナーズ、ニチレイフーズ、そしてDAIZの関連会社・果実堂を引受先とし、シリーズAラウンドで6.5億円を調達。累計調達額は12億円となった。ニチレイフーズとは資本業務提携を締結していて、共同で商品開発中だ。

DAIZ執行役員でCMOの広川氏いわく、同社は国内にとどまらず、北米市場でもB2B事業の展開を目指している。調達した資金はそのための生産体制の拡大と研究開発の強化に使われている。

「Beyond MeatやImpossible FoodsにもDAIZの代替肉原料を使って欲しい。北米を皮切りに、ヨーロッパ、アジアと、全世界的に展開して行きたいと思っています」(広川氏)

想定を上回る売れ行きで全国展開が決定

DAIZが製造する大豆由来の代替肉を採用したTHE GOOD BURGERは、糖質約45%オフの低糖質バンズを採用し、ヘルシーなハンバーガーに仕上がった。値段はフレッシュネスバーガーが提供する他のハンバーガーと比較して少し高めの480円で、サイズは小ぶりだ。醤油麹をベースにしたテリヤキソースで味付けしたのは、代替肉の魅力を最大限に活かすためだという。

「お客さんに代替肉の魅力が伝わりやすいように、シンプルなレシピで仕上げました。トマトソースなども試しましたが、テリヤキソースに使われる醤油も原料は大豆。一番しっくりきました」(逆井氏)

筆者も何度か食べてみたが、言われなければ代替肉だと気づかないほど、食肉に近い風味と食感だった。原料そのものを食べるとほのかに豆臭さがするが、テリヤキソースの醤油風味で味付けされているため、気にならない。

THE GOOD BURGERは8月12日より首都圏の一部店舗で検証販売された。売れ行きが想定を大幅に上回ったため、9月1日からはアプリ会員限定で全国展開を開始。10月1日からは全国で通常購入が可能となる。

フレッシュネスではDAIZの代替肉を採用した商品の第2弾も視野にあるという。DAIZでは代替肉を使ったチキンナゲット、唐揚げ、メンチカツなども試験的に開発している。逆井氏はハンバーガーだけでなく、代替肉を活用したサイドメニューの展開にも意欲的だ。


DAIZが試験的に開発する代替肉を使用した唐揚げ(手前)とメンチカツ(奥)

代替肉で可能となる、よりサステナブルな食肉供給

代替肉が注目を集めている背景には、タンパク質の需要に供給が追い付かなくなる、いわゆる「タンパク質危機」がある。国連の発表によると地球上の人口は2050年までに約100億人に達する。人口増加に加えて新興国の経済成長といった要因により、タンパク質の需要に供給が追い付かなくなるのだ。

広川氏はタンパク質供給をよりサステナブルにするため、代替肉の社会的意義は今後さらに拡大していくと想定している。フレッシュネスによるTHE GOOD BURGERの開発も、環境保全を念頭においたCSRの取り組みの一環だ。逆井氏は、フレッシュネでは今後もビーフを中心に商品展開をしていくが、代替肉という選択肢を模索することも重要だと話す。

「我々は代替肉を販売していますが、私自身は食肉の方が好きです。お肉はとても美味しい。しかし、人口の増加に食肉の生産が追いつかなくなり、経済的に優位な国が独占してしまう可能性もある。貿易戦争で貧しい子供たちが美味しいお肉を食べられなくなってしまうことも考えられます。僕はそれは嫌なんです」(広川氏)

新型コロナ感染拡大の渦中でも、代替肉は存在感を発揮した。従業員の新型コロナ感染により食肉加工施設の閉鎖が相次ぎ、代替肉の需要が急速に高まったのだ。米国の調査会社ニールセンによると、5月2日までの週において、米国での代替肉を含む精肉の代替食品の売り上げは前年比で約228%増加したという。

「DAIZのような企業が、代替肉の生産を通じて食肉の流通を下支えし、世の中に食肉がちゃんと行き届くようにしていくことが大事だと考えています」(広川氏)

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September 07, 2020 at 02:00AM
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