こんにちは。ライターの大塚たくまです。
マヨネーズといえば、いくらくらいのものを想像するでしょうか。ちなみに市販品のマヨネーズは、だいたい400gで400円くらい。安売りだと200円くらいのものもあるようです。
そんな中、100gで1,000円を超えるマヨネーズが存在します。2021年7月に発売された「sio」オーナーシェフである鳥羽周作さん開発の「ふつうのマヨネーズ」です。
▲ふつうのマヨネーズ 3,800円(120g×3、税込)(写真提供:sio)
「ふつうのマヨネーズ」はD2C形式で販売されており、公式ショップで購入できます。
常識とはかけ離れた価格で「ふつうのマヨネーズ」なんて言われると「何がふつうじゃい」と突っ込みたくなります。
……ということで、まずはぼくも購入して食べてみることにしました。
市販品のマヨネーズと食べ比べてみよう
▲高級感のある瓶入り
まずはそのままなめてみました。
市販品のマヨネーズとも食べ比べてみましたが、味は明らかに違う。市販品のマヨネーズは酸味と塩味がしっかりある一方、「ふつうのマヨネーズ」は明らかに甘く感じるのです。
とはいえ、どちらが美味しいかと言われると……。ぼくは「よくわからない」と思ってしまいました。市販品のマヨネーズだって、十分美味しいぞ。本当にこれは15倍以上の値段の価値があるのか……?
このマヨネーズを食材や料理につけて、試してみましょう。まずはゆで卵。
美味すぎて、笑ってしまった。思っていた味と全然違います。
市販品のマヨネーズで食べると、「マヨネーズ」と「卵」の味を別々に感じます。これはこれで美味しい。
「ふつうのマヨネーズ」をつけたゆで卵は、卵本来の味わいがマヨネーズ味に邪魔されることがありません。卵とマヨネーズの味がうまく混ざり合い、卵のおいしさを引き立てています。
近所のドラッグストアで買った10個140円の卵なのに、卵料理専門店の料理くらいの満足度。これは嬉しい!
そして、豚の生姜焼き。
破壊力MAX!!
もうこれはつければつけるほど美味いんじゃないか。「ふつうのマヨネーズ」の味が軽く、たっぷりつけても酸味や塩味がきつくならず、マヨネーズの味と香りが増し、コクのある味わいになります。
生姜焼きは味付けをしっかりする料理なので、「ふつうのマヨネーズ」に負けることはなく、たくさんつけても調和具合が伸びるばかり。
これはあっという間に瓶が空になります。コンビニで売っている、レンジでチンするタイプの生姜焼きなのに……。
市販品のマヨネーズはつけた分だけ味が強くなりますが、これは明らかに違う。
そのまま食べるより、食材や料理につけてみることで、美味しさがわかりました。「ふつうのマヨネーズ」が持つ、抜群の馴染みやすさ。これこそが、市販品のマヨネーズとの大きな違いなのです。
高価であることには間違いないので、これまでのマヨネーズの使い方と同じように、日々の食卓で使うことは難しいかもしれません。しかし「今日はいい食材が手に入ったから、食材本来の味を楽しんでみよう」というときには、大活躍してくれそうです。
日常の食の幅を広げてくれるマヨネーズだと思いました。
なんでこんなマヨネーズが生まれたのか、背景が気になります。値段も味もまったく普通じゃないマヨネーズのどこが「ふつう」なのか。
開発したシェフの鳥羽周作さんにオンラインでインタビューを行いました。
鳥羽周作シェフに聞く! 塩を感じさせないマヨネーズ
▲(写真提供:sio)
──なんなんですか、このマヨネーズ。ぼくが知っているマヨネーズと全然違って、驚きました。
鳥羽さん:ブロッコリーにマヨネーズをつけて食べるだけで「料理じゃん、これ」と、開発中に自分でも思いました。お客さんからも「マヨネーズではなく、ソースだよね」と言われます。
──たしかに。ソースと食材が掛け合わさるともはや料理ですもんね。たっぷりつけても、後味が口に残らないのはどうしてですか?
鳥羽さん:酸味と塩味をめちゃめちゃ少なくしていて、マヨネーズの素材の味以上の味付けを行っていないからだと思いますよ。
──味を軽くして、マヨネーズ本来の素材の味を邪魔しないようにしているわけですね。
鳥羽さん:ぼくのレストラン「sio」の料理の原点は「塩を感じさせない」こと。調味料の味で調理しないことを重要視しています。料理の素材の味に寄り添うマヨネーズにするため、ギリギリの量まで塩を減らしているんです。
──むしろちょっぴり甘く感じました。自然な甘さ。
鳥羽さん:酸味や塩味の量が市販品のマヨネーズと比べて少ないんですよ。酸味や塩味にトゲがなく、味のバランスが良いので、甘く感じるんじゃないですかね。
──なるほど。自然と脳内の知っている「マヨネーズ」と比較して、甘く感じていたのか。
鳥羽さん:一般的にうま味のボリュームに対して、塩が入る量はだいたい決まっているんですよ。僕の考えるマヨネーズは、そんなに酸味や塩味が強いものじゃなかったので。
──マヨネーズにこれまで「味の違い」って、感じたことがなかったんですけど……。
鳥羽さん:マヨネーズは大量生産することにより、いろいろな制約条件が生まれます。そのため、供給する側もなかなか「幅」をつくりづらいのが実情なんですよね。この制約を無視して、幅を広げたのが「ふつうのマヨネーズ」です。
──「ふつうのマヨネーズ」の賞味期限は3カ月と、なかなか短い。
鳥羽さん:「賞味期限が短くても、美味しいマヨネーズがいいよね」という方の「選択肢」になりたいと思っています。選択肢を広げることが「ふつうのマヨネーズ」の存在意義です。
なぜ「ふつうのマヨネーズ」をつくろうと思ったのか
▲(写真提供:sio)
──「ふつうのマヨネーズ」って、一瓶あたり1,267円じゃないですか。そこまで値段は上がってしまうものですか?
鳥羽さん:価格にゴールを持たず、美味しさだけをゴールにしているので、この食材、このバランスじゃなきゃいけないという観点が入ってきて、原価が高くなります。小ロットでしかつくれないことも、価格には大きく影響していますね。
──とにかく「美味しいもの」を追求したマヨネーズなんですね。
鳥羽さん:マーケティングやブランディングありきではなく、自分が「美味しいマヨネーズ」と思うものをつくりました。
──どうしてそんなマヨネーズをつくろうと思ったんですか?
鳥羽さん:コロナ禍のため自宅で料理をすることが増え、習慣になった方がけっこう多いと思います。そんな方に食卓をもっとかんたんに豊かにできるものがないかと考えたときに「マヨネーズ」が浮かびまして。
──なぜ、そこでマヨネーズを選んだんでしょうか。
鳥羽さん:マヨネーズは誰もが知っていて、誰でも使っている馴染み深い調味料じゃないですか。お店でもつくることが多くて、やりやすい部分がありました。レストランの考える「味」を自宅用に提供したいと思ったんです。
──たしかに「自宅で美味しいものを食べたい」と考える方は増えた気がします。
鳥羽さん:ぼくも自分のYouTubeの反響を見て感じるんですけど、「ちょっと難しいかな」と思う料理も、けっこう自宅でやっている人がいるんですよね。そんな方々に「ふつうのマヨネーズ」の選択肢を知っていただきたいんです。
どう見ても「ふつうのマヨネーズ」じゃないよね?
──このマヨネーズの名前って「絶品マヨネーズ」とかだとしっくりくるんですけど……。そうせずに「ふつうのマヨネーズ」にしたのはなぜですか?
鳥羽さん:自分が食べたいマヨネーズがつくれて「美味しい」という自信は持っています。でも、このマヨネーズに「絶品」とか「最高」のような言葉は、トゥーマッチだと思います。ぼくにとって、このマヨネーズは「基準値」なんです。
──これが基準値なんですか。
鳥羽さん:このマヨネーズを一緒に開発してくれたチームの方に食べてもらったところ、味に感動して「マヨネーズって、もともとこうだったのかもしれない」と言ってくれたんです。
──ああ、なるほど。「何の変哲もないマヨネーズって、もともとこういうものだったんじゃないか」という意味合いでの「ふつう」なんですね。
鳥羽さん:いずれ、このマヨネーズを普通に暮らしの中で存在するものにしたいんです。でも、「ふつうのマヨネーズ」は価格の面が、まだ普通ではありません。価格も普通になるような努力が必要だとは思っています。
──すごい。マヨネーズのこれまでの固定観念が薄れ、こういうマヨネーズが普通になると、たしかにいいですよね……。
鳥羽さん:高級アイスクリームでも、以前は「高い」と思われていたけれど、今ではコンビニで普通に売られているものもあるじゃないですか。そんな、普通に存在する選択肢になるといいな、と思います。
マヨネーズの「選択肢を広げる」
▲(写真提供:sio)
──なぜ鳥羽さんは「選択肢を広げたい」と考えていらっしゃるんでしょうか。
鳥羽さん:さまざまなものの良さを伝えて、多くの方々が適正なものを選択できるようにしたいんですよね。たとえば、回転寿司しか知らなかったら、カウンターの寿司の良さは一生知らないままじゃないですか。
──たしかに。逆に回転寿司にしかない良さもありますし、絶対的にどちらが良いっていうものではないですからね。
鳥羽さん:そうなんです。「どちらのほうがいい」ではなく、それぞれの良さが見えるようにしたいんですね。
──「ふつうのマヨネーズ」が普通の選択肢になるためには、まずは食べてもらいたいですよね。
鳥羽さん:そうです。だからこそ、レシピを無料公開しました。「買うには高すぎる」という方は、ぜひつくってみてほしいです。
▲YouTubeやnoteでレシピを公開
──公開されていたのでやってみましたよ、ぼくも。マヨネーズって、自分でつくれるんですね。
鳥羽さん:そうなんですよ。マヨネーズって、じつは自分でつくれるんです。
──技術はいらないので、誰でもできるんですけど、かき混ぜるのが大変で疲れました。
▲とにかく大変でした
鳥羽さん:ボウルを冷やしながらやらないと、分離の原因になってしまうんですよね。油も少しずつ足しながらかき混ぜていかないといけないので、大変だったでしょう。
──一生懸命かき混ぜて、だんだん乳化してきて、嬉しかったです。食べてみると「自分でこんなに美味しいマヨネーズがつくれるのか」と驚きました。
鳥さん:そうでしたか! ぼくの思いは、このマヨネーズをできるだけ多くの人に食べてもらいたいということなんです。
──マヨネーズをつくってみたことで、マヨネーズの価値観が変わりました。大変だったことで「市販品のマヨネーズって、安くてすごいな。ありがたいな」とも感じて。
鳥羽さん:マヨネーズに対して、そこまで感じていただけたんですね。レシピを公開して良かったです。
──たしかに、レシピ公開なんて、普通なら絶対やらないですよね。それほど、真剣に「ふつう」にすることを考えていらっしゃるんですね。
鳥羽さん:まだまだ、全然できていないんですけどね。「ふつうのマヨネーズ」もおかげさまで、売り切れも発生しているんですけど、なるべくそんなことはなくしたいと思っているんです。
──頻繁に売り切れを起こすマヨネーズは、普通とは言えないですもんね……。
鳥羽さん:在庫をしっかり確保して、買いたいときに買える状況をつくり、将来的に「ふつうにする」というスタンスを持って取り組んでいます。
バナナやあんこにも「ふつうのマヨネーズ」が合う衝撃
──「ふつうのマヨネーズ」をもっと楽しみたいと思っているんですが、普通ならマヨネーズと合わせないような、意外な組み合わせはないでしょうか。
鳥羽さん:高級系の食パンはよく合いますね。あと、アイスクリームとかどら焼きも合います。
──え! 甘いものもいけるんですね。
鳥羽さん:バナナも美味しいですよ。甘さと酸味が同調するような感じになって、合います。
──バナナですか!! それは想像もつかないな……。やってみます。本日は貴重なお話をありがとうございました。
……ということで、インタビューの後で、鳥羽さんにご紹介いただいたマッチングをやってみました。
まずはどら焼き。どら焼きがなかったので、代用品としてアンパンで試してみました。本当にあんこと合うのか。
めっちゃ合いました。あんこにクリームをのせたみたいになって、コクが増します。いつものアンパンよりも酸味が入ることによってさわやかでありながら、ちょうどいい塩気であんこの甘味が引き立って美味しい。
甘いものと合わせると、「ふつうのマヨネーズ」のコミュ力の高さに驚かされますね。とにかく、馴染む力が素晴らしい。
市販品のマヨネーズだと、味との相性のせいか、「あんこの味」と「マヨネーズの味」が別々に舌にやってくる感じになります。合わないんですよ。
じゃあ、バナナにも合うのだろうか……。
まず市販品のマヨネーズで試したところ、シンプルに「合わない」という以外に感想が出てこず、「当然だろ」「何をしているんだ」という空虚感に襲われました。
でも、「ふつうのマヨネーズ」だと、バナナにも合うんです。
初めて食べる味なんだけど、たしかに美味しい。「ふつうのマヨネーズ」って、塩気のある食べ物に合わせるとソースになり、甘味に合わせるとクリームになる感じがします。ぜひこの不思議体験を味わってみてほしい……。
そういえば、鳥羽さんは食パンに合うとおっしゃっていました。もしかすると「ふつうのマヨネーズ」でフルーツサンドをつくると、美味しいのかもしれない。
高揚感とともに、フルーツサンドをつくってみました。
大正解でした! とっても美味しい。甘いフルーツサンドがちょっと苦手という方の、新しい選択肢になるかもしれない、マヨネーズのフルーツサンド。
もちろん市販品のマヨネーズでやっても、強い酸味や塩味がバナナに馴染まないので合いません。「ふつうのマヨネーズ」の汎用性の高さに驚くと同時に、ぼくの中でマヨネーズの常識が大きく変わりました。
10個で140円の安い卵を、家に帰るのが楽しみになるレベルの美味しいゆで卵にしてくれるマヨネーズがある。そんな選択肢もあっていいんだと思います。
ぜひあなたも「ふつうのマヨネーズ」を体感してみてください。買うのはもちろん、つくるのもアリです。鳥羽さんによって、ついにマヨネーズワールドへの扉は開かれました……!
書いた人:大塚たくま
福岡に住む九州を愛するライターで二児の父。グルメ、旅行、子育てに関する記事を多数執筆。便利で心を動かす記事を書きたい。取材が大好きで、情報量の多い記事を目指しています。
からの記事と詳細 ( バナナにも合う衝撃!「ふつうのマヨネーズ」 が美味しい理由を鳥羽周作シェフに聞いてみた - メシ通 )
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