【カイロ=酒井圭吾】イランが米国に報復攻撃を行ったことに対し、イランと敵対するイスラエルのネタニヤフ首相は8日、スレイマニ司令官を殺害した米国への支持を表明した。一方、アラブ諸国は、米イランの全面衝突に発展した場合、戦闘が自国に波及することを避けたい考えで、抑制的な対応が目立っている。
イランは8日の米軍駐留基地への攻撃後、イスラエルや米軍基地がある湾岸諸国を「次の攻撃」の対象にする考えを示した。
ネタニヤフ首相は8日、スレイマニ司令官殺害について「トランプ米大統領は、中東のテロの背後にいるテロリストに対し、勇気を持って行動してくれた」と述べ、イランをけん制した。イスラエルの隣国レバノンには、親イランのシーア派組織ヒズボラが臨戦態勢を取っているとされる。首相の発言がヒズボラのイスラエルに対するさらなる攻撃を誘発する危険性もある。
一方、米軍基地があるアラブ首長国連邦(UAE)やバーレーン、カタールなどアラブ諸国は、米国の同盟国ながら、事態の推移を注視するにとどめている。UAEのガルガシュ外務担当国務相は8日、ツイッターで「米イランは政治的解決の道を探るべきだ」と書き込んだ。イランの宿敵であるサウジアラビアも沈黙を守っている。
サウジは昨年9月、国内の石油関連施設がミサイル攻撃で破壊された。イランが背後にいるとみられており、アラブ諸国は「親イラン勢力」の攻撃能力の高さを見せつけられた。米イランの対立で戦火が広がれば、原油輸送の大動脈であるホルムズ海峡が封鎖に追い込まれ、産油国に大打撃になるとの危機感が強い。
「仲裁外交」の動きも活発化している。イランの隣国トルコのエルドアン大統領は9日にイラクを訪問し、対立の舞台となったイラクと対応を協議する方針だ。
米国が反撃を控えたとしても、シーア派民兵組織の中に火種はくすぶる。イラクの「アサイブ・アフル・ハック」は8日、ツイッターで「イランの攻撃は終わった。次は我々の番だ。イラン以上の報復となることを約束する」と声明を出し、米軍への攻撃を続ける構えを示した。
2020-01-08 13:24:46Z
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