【ロンドン=池田晋一】世界貿易機関(WTO)の紛争処理小委員会(パネル)は15日、米国と中国の貿易紛争について、米国が2018年以降に中国に課した制裁関税は、WTO協定違反とする報告書をまとめた。知的財産権の保護など中国の構造問題を巡り米中は貿易紛争を激化させたが、WTOは、米国の制裁関税の正当性を否定した。
パネルは、米国の制裁関税について「正当性を示す十分な説明をしていない」と指摘。WTO加盟国の差別を禁じる「最恵国待遇」の原則に違反し、制裁関税の税率も、WTOが取り決めた水準を上回っていると指摘した。その上で、パネルは「米国は、自国の利益を守るとする主張を裏付けることができなかった」と結論づけた。
今回のパネル審理の対象となったのは、米国が18年6月と9月、19年5月に中国製の日用品や食品の関税を25%に引き上げた措置などだ。これに対し、中国は報復関税で応じた。米中は今年、一部の関税を引き下げる「第1段階」の合意に至った。
米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は15日、「WTOは中国の有害な慣行を阻止するのに完全に不十分だ」と声明を出した。また、今回の報告書が2月発効の「第1段階」合意には影響がないと強調した。
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