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Sunday, October 25, 2020

【話の肖像画】パティシエ・鎧塚俊彦(55)(2)祖母の和食とデパートのパフェ - 産経ニュース

幼い頃、母と。「とったん」と呼ばれて、近所中でかわいがられた
幼い頃、母と。「とったん」と呼ばれて、近所中でかわいがられた

 《昭和40年、茶所として知られる京都府宇治市で生まれた。日本ではまだパティシエという言葉が聞かれなかった時代で、学校から帰ると毎日、おばあちゃんが用意してくれたおやつをほおばっていた》

 もとは武家屋敷だったところに、ひとつながりの長屋があり、そこに14世帯が住んでいました。僕の家は祖母、父母、兄、姉で、自分で言うのもなんですが、「とったん、とったん」と隣近所の長屋のおじちゃん、おばちゃんにかわいがってもらいました。どの家も鍵なんてかけていません。夫婦げんかは筒抜けで、言い争う声が聞こえてきたら、みんなで止めにいく。長屋中が大きな家族みたいでした。

 両親が共働きで、学校から帰るとおばあちゃんが干し芋だったり、ゆで卵だったり、おやつとして出してくれる。ケーキや洋菓子が出てくるようなことはめったになかったですね。

 僕の舌を育ててくれたのは、おばあちゃんの手料理です。今思うとちょっと塩加減が強かったかもしれないけれど、理想的な食生活でした。30代の頃、体にいい食生活について勉強したことがありましたが、テキストに書いてあることがそのまま僕の子供の頃の朝ご飯や夕ご飯。ホウレンソウのおひたしやゴマあえ、おから、焼き魚にご飯とみそ汁。おばあちゃんの、さらにそのおばあちゃんの頃から、食べ継がれてきたものなんですね。素材の味をそのまま引き出した料理というのかな。そんなおばあちゃんの料理を毎日食べていた僕はパティシエになるために恵まれた環境で育ったのかな、と思うんです。調味料に頼りすぎたものを食べてきた人は、濃い味付けに慣れてしまった舌になる。

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October 26, 2020 at 08:00AM
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