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Sunday, February 21, 2021

「デザートは別腹」とは医学的に本当? 消化器病専門医に聞く - ウートピ

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おなかいっぱいに食事をした後、好物のデザートが出てきたらいくらでも食べられる……スイーツ好きの人なら、そんな「デザートは別腹」と言う人は多いでしょう。この「別腹」とはいったいどういう現象なのでしょうか。そのとき、胃はどうなっているのでしょうか。

兵庫医科大学病院の副院長で消化器病指導医・専門医、内科指導医の三輪洋人(みわ・ひろと)医師に別腹の謎についてお尋ねしました。

満腹でも好物のスイーツを見たら胃にスペースが空く

——「デザートは別腹」という現象は本当にあるのでしょうか?

三輪医師:はい、本当です。結論から言って、それまでに食べたもの以外の好物を目にしたら、胃にスペースが空いてまた食べられるようになるのです。これは脳と胃の働きによって起こります。

——胃が2つあるのではなく、「別腹」と言える空間ができるのですね。脳では何が起こっているのでしょうか。

三輪医師:食欲に関して、満腹や空腹を調節しているのは脳の視床下部(ししょうかぶ)という部分です。おなかがすいたから何かを食べようとするのは「摂食中枢(ちゅうすう)」による働きで、おなかがいっぱいになったから食事終了とするのは「満腹中枢」の働きによります。

食事をすると満腹中枢が刺激されて満腹感を得ます。このとき、摂食中枢のほうは抑えられます。ただしヒトの脳は複雑で、食べ物の風味、見た目、香り、またそのときの環境、気分、過去のおいしかった・まずかったという記憶などで食欲は変化します。それに、ひとつのおかずだけを食べ続けたときには、「このおかずはもういらない。もう満腹だ」と感覚的に判断するといった特異な満腹感が存在するとの研究報告もあります。

一方、メインの料理でおなかがいっぱいになっても、違う風味で好物のデザートが現れたら、脳の「摂食中枢」からオレキシンという摂食を促す物質が分泌され、胃は内容物の消化を進めて新たなスペースをつくることがわかっています。

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おかきやラーメンなどでも同じこと

——脳の働きで食欲に関する感覚的な反応が生じて、満腹でもさらにデザートが食べられるということですね。

三輪医師:そうです。実のところ胃が内容物で満杯であっても、脳が発する感覚によって胃の状態が変化するというわけです。胃は内容物が入ってきたら伸びて膨らみます。その作用も満腹中枢に伝えられて食欲は抑えられるのですが、好物に触れたら摂食中枢の作用のほうが上回ると考えられます。

——ということはスイーツではなくて、おかきやポテトチップスなどしょっぱい系のお菓子や、シメにラーメンやうどんなどでも同じ現象が起こるのですね。

三輪医師:甘いものだけではなく、どんな味の食べ物でも、それまで食べたおかずと違う味わいで好きな食べ物なら起こりえます。小皿料理の食べ放題などでは違う味が並ぶので、いつもよりたくさんあれこれと食べるでしょう。デザートと同じように、「これは別腹」と脳が感知して食べるようになるのです。

好物を食べると幸福感を得る

——「おなかいっぱいなのにデザートを食べると食べ過ぎかも」と思ってもつい食べています。

三輪医師:好物を食べると、脳では多幸感をもたらすといわれるβ-エンドルフィンや、快楽の感情や意欲を駆り立てるドーパミンという物質が分泌されます。過去に好きなものを食べて気分が満たされた体験が、幸福感を得られるという記憶となって食欲を呼ぶわけです。

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——では、食べ過ぎ予防には「デザートは別腹はNG」ととらえたほうがよさそうです。

三輪医師:おなかいっぱいに食事をした後の「デザートやラーメンは別腹だから食べる」という行為は、1食の適量を超えるカロリーオーバーとなるでしょう。

まずは「デザートは別腹」とは食べ過ぎのサインだと認識しましょう。同時に、「本当にまだ食べる必要があるのか?」「ここでデザートを食べたら総量で何キロカロリーなのか?」「後悔しないか?」と自問してみてください。

デザートなどシメの何かまで食べたいときは、1食全体でのカロリーが過多にならないように、おかずやごはん、パン、デザートを少しずつ減らすといった工夫をしましょう。難しいことではありません。それを数回くり返すと、「慣れました。胃も腸も軽くなって、食べ過ぎた罪悪感もなくなるので楽に続けられる」という患者さんも多いです。

聞き手によるまとめ

「デザートは別腹」の感覚は脳の働きと胃の作用で実際に起こる現象であること、ただし、食べ過ぎのサインでもあるということです。その感覚でン十年、デザートを食べ続けてきました。しかもパクパクと、1食以上のカロリーをさらにプラスしてとっていたこともあったはずです。過去には戻れませんが、これからは「デザートやシメのラーメンは別腹」と思ったときは、すぐさま、「本当にまだ空腹か?」と自らに問うようにします。

(構成・取材・文 藤井 空/ユンブル)

取材協力・監修
三輪洋人氏。医学博士。兵庫医科大学副学長。同病院副院長・消化器内科主任教授。専門は逆流性食道炎(胃食道逆流症)機能性胃腸症、ヘリコバクターピロリ感染症の診断と治療、内視鏡による胃がんの早期診断と化学療法。日本内科学会理事・指導医、日本神経消化器病学会理事長、日本消化器病学会理事・専門医・指導医、日本消化器内視鏡学会専門医・指導医、日本消化管学会代議員・胃腸科専門医・指導医、日本食道学会食道科認定医、日本ヘリコバクター学会理事・H.pylori感染症認定医、日本潰瘍学会理事、日本高齢消化器病学会理事等、幅広く活動中。

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