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Saturday, November 11, 2023

進化する非常食、どれだけうまいのか? 3日間それだけで生活してみた ... - 南日本新聞

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普段の食卓と変わらないメニューも増えている非常食=鹿児島市鴨池新町の県社会福祉協議会

普段の食卓と変わらないメニューも増えている非常食=鹿児島市鴨池新町の県社会福祉協議会

 全国的に大規模災害が相次ぐ中、災害用の非常食が進化している。豚汁や煮物など普段の食卓と変わらないメニューが増えているという。備えにつなげようと、非常食だけで3日間生活してみた。「味は二の次」というイメージは覆された。一方で濃い味付けに箸が進まないことも。実際に食べて好みの非常食をそろえる大切さも学んだ。

 自宅の電気とガスが止まり、湯も使えないという設定。非常食以外は普段の生活を送った。

 スーパーやインターネット通販で計9食分を購入。献立は栄養バランスを考えた。食べる方なので鶏肉や魚の缶詰も多めに準備し、ボリュームにも配慮した。

 1日目の昼食はワカメ入りの「アルファ米」おにぎり。袋に水を注ぎ、1時間待つと出来上がり。コンビニエンスストアのおにぎりより1回り大きい。少し軟らかめだが、米のうま味を十分に感じる。袋を開ければそのまま食べられる筑前煮も具材に味が染み、あっという間に完食した。

 2日目。味には満足しているはずだったが、温かいメニューが恋しくなった。被災地と比べて恵まれている環境にいるのは分かっている。それでも汁物が冷たいのはつらい。少し気持ちがめいってしまった。

 夕方帰社すると、先輩から土産のクッキーを手渡された。非常食生活を忘れ、口に入れてしまった。甘さが心地良く、不思議と前向きな気持ちが湧いてきた。

 3日目の夜は、火を使わずに加熱できる発熱剤(3個入りセット約800円)を使った。加熱袋に発熱剤を入れ、その上に食品を置いて水を注ぐと加熱が始まる。ドライカレーときのこ汁を入れると湯気が上がり、20分後に完成した。口の中で3日ぶりに広がるぬくもり。心身共に活力が湧く。温かい食事のありがたみを感じた。発熱剤は多めに用意するのがお薦めだ。

 肉を取ろうと多くの食事に取り入れた焼き鳥の缶詰には少々苦戦した。味付けが濃く、胸焼けを起こすこともあった。

 今回の献立での栄養バランスについて、非常食に詳しい甲南女子大学の奥田和子名誉教授に聞いた。缶詰でタンパク質の魚や肉を積極的に摂取した点は評価されたが、朝食の物足りなさを指摘された。

 奥田名誉教授は「朝食にツナ缶やレトルトの野菜スープを加えればバランスが良くなる」と助言。「特に災害時は野菜に含まれるビタミンやミネラルなどが不足しがち」と意識的に野菜を取る必要性を強調した。

 ドライフルーツなどのデザートや紅茶を加えることも推奨。「甘い物など好きな食べ物を加えることが、災害時のストレスを和らげてくれる」と話した。

■食の充実で災害関連死防止を

 非常食の栄養や味が向上している背景には、災害が起きるたび被災者の食事の重要性が認識されてきた経緯がある。関係者は食の充実が、避難先で命が失われる「災害関連死」の防止にもつながると指摘する。

 1995年の阪神大震災の非常食は「硬くて冷たい」乾パンが主流だった。以降、各被災地では食事が被災者の体力や気力、復興への意欲にも影響すると考えられるようになった。

 鹿児島県社会福祉協議会によると、最近は歯茎でつぶせる高齢者向けの軟らかい非常食も登場。アレルギーやイスラム教の戒律に従った「ハラール」に対応した商品も増えている。

 同協議会ボランティアセンターの辻健一所長(54)は「食べる自由も制限される災害時に食事を選択できるような環境づくりが必要だ」と訴えた。

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