匂いも味も本物そっくり!? 米・ミートレス革命最前線
ベジタリアンやビーガンを揶揄するような言説も日本では珍しくないが、いま、アメリカでは動物由来の食材や成分を使わない肉「ミートレス」が急速に広まっている。ビーガンやベジタリアンが食べていた“フェイクミート”と違い、「ミートレス」ミートは焼けば血がしたたり、見た目も匂いも肉そのもの!? バーガーキングの「インポッシブルワッパー」が大人気となり、ケンタッキーフライドチキンが試験販売した「ビヨンド・フライド・チキン」はたちまち売り切れた。
ブームの背景には「ミレニアム世代」
年間2000億ドルを消費する“肉食大国”米国で何が起きているのか? プリンストン在住の作家・冷泉彰彦氏は人気の背景をこう読み解いた。
「従来の代用肉はビーガンやベジタリアンの食べものだったが、ミートレスミートは当初から肉を好む消費者層をターゲットにしており、市場規模が格段に大きい。さらに、米国の消費の中核をなすミレニアム世代が後押ししている。ポケモンなど日本のポップカルチャーに親しんできた彼らは米国の旧世代とは違い、多様性に溢れた独自文化を持っています。食に関しても、米国の旧世代のように大きなステーキにかぶりつくのではなく、文化の違う日本食や多文化が融合したフュージョン料理を好んできた。彼らがミートレスを支持するのは自然な流れなのです」
環境コンシャスなミレニアム世代
COP25で気候変動対策への強化を訴えているグレタ・トゥーンベリさんもビーガンであるように、肉食はアニマルライツだけでなく、環境負荷が大きいことでも知られている。
9月にグレタさんが国連の気候行動サミットでNYを訪れた際に、世界中で気候変動の危機を訴える若者たちを中心とするデモが行われ、NY市だけでも6万人が参加したというように、そうした環境への意識がアメリカの若者たちの間で根付いてきているのも要因だ。
ヘルシーなミートレスだが、環境負荷が小さいことも浸透の要因であり、それは米国民のマインドの変化を表しているのである。
「ただ、トランプ大統領がパリ協定を離脱したように環境負荷など考えない米国人も多い。ラストベルトの人たちは相変わらず、毎日デカいステーキを食べており、食についても米国は分断していると言っていい」
米国の分断はここまで根深いようだ。
<取材・文/斎藤武宏>
ハーバー・ビジネス・オンライン
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