大河ドラマ『麒麟がくる』では、しばしば〈甘い食べ物〉が登場している。
【第4話=干し柿とマクワウリ】尾張織田信秀の館に潜入した明智光秀(演・長谷川博己)が、人質となっている松平竹千代(後の徳川家康)に遭遇。〈美濃の干し柿〉を与える。竹千代の「干し柿、甘い」というセリフも。さらに同回では、織田信秀(演・高橋克典)がマクワウリを美味しそうに頬張るシーンが登場。
【第5話=柿】光秀にいとまごいをするため明智荘に行くという駒(演・門脇麦)に同行した菊丸(演・岡村隆史)。木陰で休憩中の菊丸に、子供らが柿を渡す。
【第6話=水飴】管領細川晴元による三好長慶襲撃事件に助っ人として参陣し、左肩を負傷した明智光秀。に対する松永久秀(演・吉田鋼太郎)の見舞いの品が水飴だった。
【第7話=饅頭と干し柿】叔父・明智光安の館で面会した光秀。光安は饅頭を食べている。今の肉まんくらい大きな、白い饅頭だが、中に何が入っていたかは不明(何も入っていないようにも見えた)。また、駒が光秀に「はい、干し柿」と手渡す場面で、再び干し柿が登場した。
戦国時代に甘い食べ物といえば、干した栗や柿、ウリや梨などの果実が主流だった。このうち、干し柿とマクワウリは美濃の名産ということが知られているが、米や麦などの穀物から作る水あめも古来、貴重な糖分、甘味として親しまれた。古くは、『日本書紀』にもあめ(水あめ)が登場している。
饅頭は、室町時代の貞和5年(1349)創業の塩瀬の饅頭が有名だ。貞和5年に中国から日本にやってきた塩瀬の始祖・林淨因が、小麦粉の生地に肉を詰めた中国のマントウをヒントに、生地に甘蔦(あまづる)の汁で甘く味付けした小豆を詰めて蒸したものを考案。これが日本における饅頭の始まりだといわれている。信長や光秀、秀吉や家康も食したというから歴史は古い。
ドラマの中で光秀が鉄砲に多大な関心を示しているように、ちょうど同じ頃、鉄砲が南蛮との交易で日本に入ってきた。国外からも様々な文物とともに、当時のヨーロッパで権力者たちが虜になっていた甘い菓子もまた、宣教師によって日本に紹介された。宣教師たちが日本に持ち込んだ菓子としては、カステラ、金平糖、有平糖、カルメラ、マルボーロなどがあった。宣教師たちからすると、甘い菓子はキリスト教への布教アイテムに過ぎなかったのだが、甘い物はすぐに日本に受け入れられたようだ。
戦国武将の中では特に、織田信長が甘い物好きとして知られている。永禄12年(1569)4月16日、将軍足利義昭のために信長が築城中だった二条城に安土城の建設現場に、宣教師ルイス・フロイスが信長を訪ねている。
フロイスの書簡によれば、その際持参した手土産のひとつが、フラスコ入りの金平糖だった。信長は大喜びだったという。これが信長と金平糖との出会いで、その後も信長は折に触れて宣教師たちに金平糖をおねだりしたという逸話が残っている。
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