たっぷりのメープルシロップをかけて食べるホットケーキは、焼きたてだと甘みが口いっぱいに広がりますが、一度冷ますと甘みがかなり減っています。これは人間だけの話ではなく他の生き物でも、冷たい食べ物に対しては食欲が減退する傾向にあることがわかっています。なぜ冷たいと食欲が減退するのかという仕組みについては、よくわかっていなかったのですが、カリフォルニア大学サンタバーバラ校の研究者がハエの場合の原因を突き止めています。
Temperature and Sweet Taste Integration in Drosophila - S0960-9822(20)30436-X.pdf
(PDFファイル)https://www.cell.com/current-biology/pdf/S0960-9822(20)30436-X.pdf
Biologists investigate why the sweet taste of sugary foods diminishes when they're cool
https://phys.org/news/2020-04-biologists-sweet-sugary-foods-diminishes.html
カリフォルニア大学サンタバーバラ校のクレイグ・モンテル教授らは、「冷たい食べ物では甘みが少なく感じられる」ということが人間だけではなくキイロショウジョウバエにも当てはまるのか、当てはまるとすればその根底にある仕組みは何なのかと考えました。
キイロショウジョウバエが糖分を感知する味覚ニューロンは1種類で、苦みや食感はそれぞれ別の味覚ニューロンで感知しています。一方で、温度の感覚はやや複雑で、苦みを感じる味覚ニューロンと食感を感じる味覚ニューロンがともに活性化されてはじめて「冷たい」と認識するとのこと。この、苦みを感じる働きにはロドプシン6(Rh6)と呼ばれるタンパク質が関わっています。
これまでの研究から、キイロショウジョウバエは食べ物が苦かったり、硬かったりすると食欲を失うことがわかっています。研究チームは実験を行い、気温が下がることでもハエの食欲が低下することを確認しました。しかし、行動が変化したにも関わらず、甘みを感じる味覚ニューロンの活動に違いはみられませんでした。
研究チームは、Rh6を除去すると、キイロショウジョウバエが苦みを感知している味覚ニューロンが低温でも活性化しないということを確認しました。この味覚ニューロンが活性化しないことにより、ハエは低温であることを認識できず、「冷えてしまった糖分が多い食べ物」にも魅力を感じるようになるとのこと。
モンテル教授は、そもそも寒くなるとキイロショウジョウバエの食欲が低下する原因については「代謝が低下するため、餌をそれほど必要としなくなるから」と推測しています。なお、人間も同じように冷たいものの甘みはあまり感じませんが、恒温動物なので、ハエで見つかったメカニズムは当てはまらないとのことです。
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