「ストレス太り」という言葉があるように、ストレスと肥満は関係しているといわれます。実際に、ストレスが多い時期に太った経験がある人もいるのではないでしょうか。もしくは、反対にストレスで痩せてしまったことがある人もいるでしょう。
本記事では、ストレスで太るメカニズムについて、またストレスと食事の関係についてご説明します。
ストレスと食欲には関連がある
ストレスと食欲には関連があるといわれています。大きなショックや強い精神的ストレスを経験したときに感じるストレスを「急性ストレス」といいます。急性ストレスでは交感神経が働き、食欲の減退につながることもあります。
一方、「職場での人間関係がうまくいかない」といった、長期的に感じているストレスを「慢性ストレス」といいます。慢性ストレスでは、ストレスホルモンによって脂肪が貯め込まれ、太りやすくなることが知られています(反対に痩せていく場合もあります)。ストレス解消法としてやけ食い・やけ酒をする人もいますが、これも肥満の原因です。
ストレスに強くなるために「食事」を意識しよう
ストレスを感じたら甘いものや脂っこいものを食べる、もしくはお酒を飲むという習慣ができてしまうと、ストレスの増加に伴い食べる量が増えて肥満につながってしまいます。 食事や飲酒以外にも「音楽を聴く」「スポーツを楽しむ」「人に話を聞いてもらう」などさまざまなストレス解消法を活用するようにしましょう。
ストレスに強くなるために食事の内容を意識することも大切です。規則正しい時間に栄養バランスのとれたメニューを適量食べることで、ストレスに負けない体づくりができます。さらに、ストレスに備えて次のような栄養素を含む食品を意識的に摂るようにしてみましょう。
脳神経の興奮を抑える「カルシウム」を含む食品
・牛乳、チーズ、ヨーグルトなどの乳製品
・豆腐
・小魚
・大根の葉
・ひじき など
カルシウムの吸収率を高める「ビタミンD」を含む食品
・さけ
・さば
・しいたけ
・きくらげ など
ストレスへの抵抗力を高める「ビタミンC」を含む食品
・ブロッコリー
・小松菜
・イチゴ
・キウイフルーツ
・柿 など
免疫機能維持のために必要な「タンパク質」を含む食品
・肉類
・魚介類
・乳製品
・大豆製品 など
このほかにも、自律神経を調整するビタミンE、不足すると疲れやすくなるビタミンB1、体内の機能を維持するマグネシウム、免疫機能維持のために必要な亜鉛など、多くのビタミンやミネラルにはストレスから体を守ってくれる働きがあります。
もしストレスによって胃腸の具合が悪いときは、脂肪や食物繊維が多い食品は避け、消化しやすい料理を食べるようにしましょう。
例えば、お粥や煮込みうどん、卵豆腐、ポタージュスープなどは、胃腸が弱っているときに適した料理です。肉類では脂が少ない鶏ササミ、野菜類ではにんじんやじゃがいもなど食物繊維が比較的少ないものがおすすめです。
食べ過ぎても太らない食べ物はある?
どんな食べ物であっても食べ過ぎは肥満や体の不調のもととなってしまいますが、多く食べても太りにくい食べ物としては野菜が挙げられます。
野菜はビタミンやミネラル、食物繊維を多く含んでいて、野菜を多く食べる人は脳卒中や心臓病などの病気にかかる確率が低いという結果が多く出ています。野菜の多くは低カロリー・低脂肪ですが、食物繊維が豊富で食べ応えがあるため満腹感が得られます。
また、野菜には糖質をエネルギーに変えるサポートをしてくれるビタミンが含まれているものが多いため、パンやご飯といった糖質を多く含む食品を食べる際に野菜も一緒に食べるようにするのがおすすめです。
健康維持のためには、1日に野菜を350g以上食べるのがよいといわれています。しかし、厚生労働省の国民健康・栄養調査(平成30年)では、野菜類の平均摂取量は成人男性が約290g、成人女性が約270gと、350gを下回っています(※)。
生野菜はたくさんの量を食べるのが大変なので、茹でたり電子レンジにかけたりと、かさを小さくする調理をして食べやすくするとよいでしょう。
ダイエット中の方は、糖質や脂質を多く含む高カロリーな食品を極力食べないようにしたり食事量を大幅に減らしたりすることがありますが、こうしたダイエットは健康に悪影響があるだけでなく、リバウンドしてさらに太りやすい体になってしまう可能性も高いです。
健康的に痩せるためには、食事のバランスを整えて、食事よりも先にお菓子やお酒の量を見直すことが大切です。すぐに体重を減らそうとせずに、筋トレなどで筋肉量を維持しながら、長期的なダイエットに取り組むようにしましょう。
食事に気をつけても太ってしまった場合には?
気をつけていてもストレス太りしてしまった場合には、まず1日の生活リズムを見直し、普段よりも少し丁寧に暮らしてみることをおすすめします。
朝は太陽の光と朝食で体内時計をリセットし、日中は適度に体を動かす。そして夜はゆっくりと湯船につかってリラックスし、早めに布団に入る。
このような体内時計を意識した生活リズムで心と体を整え、あらためて自分にあった対策を考えるとよいでしょう。
まとめ
ストレスで太ることがあるのは、慢性ストレスによってストレスホルモンが出て、脂肪をため込みやすい体になるためだとご説明しました。また、ストレス発散のために食べ過ぎたり飲み過ぎたりすることも肥満につながります。
規則正しく、栄養バランスの整った食事を心がけることで、肥満予防になるだけでなく、ストレスに負けない体づくりにもつながります。かといって食事に気を遣い過ぎて、自分の好きな食べ物を我慢することもストレスになってしまいますよね。まずは、野菜を多く摂るように意識する、食べ過ぎてしまったら運動するなど、できる範囲で始めてみましょう。
参考 :
(※) 厚生労働省「国民健康・栄養調査結果の概要(平成30年)」
尾上雅子
おのえまさこ
管理栄養士
大学卒業後、食品メーカーにて、品質管理・商品企画・広報などの業務に携わる。現在は、企業やクリニックにてビジネスパーソンの健康サポートを行うとともに、商品・サービスの監修、コラム執筆など、食と健康の分野で活動中。
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