【パリ=白石透冴】世界貿易機関(WTO)は8日、次期事務局長の候補をナイジェリアと韓国の候補に絞り込んだ。米国と中国がWTO改革を巡って綱引きしており、今回の人事にも影響するとの見方がある。両国の対立が深まれば、選出に手間取りそうだ。
任期を1年残して辞任したアゼベド氏の後任人事となる。8日のWTO加盟国の会合では、ナイジェリアのヌゴジ・オコンジョイウェアラ元財務相と韓国の兪明希(ユ・ミョンヒ)通商交渉本部長が候補として残った。どちらが勝っても初の女性の事務局長となる。
事務局長人事は、加盟国の全会一致で決める仕組みになっており、原則、投票はせず、11月上旬までの合意を目指す。WTOは機能不全が指摘されており、新事務局長は立て直しの重要な局面でバトンを受けることになる。
オコンジョイウェアラ氏は世界銀行で専務理事を務めた経験があり、調整力に定評がある。出身国であるナイジェリアが中国の大規模な経済支援を受けていることから、同氏が中国の影響を受けやすいのではないかとの見方もある。
兪氏は日本が対韓輸出の管理を厳格化した時に、通商交渉本部長として強く日本に反発し、WTOへの提訴も主導した。このため、日本は支持しにくいとの見方がある。兪氏は7月の記者会見で日本にも支持を訴えた。
米中は支持する候補を明かしていない。中国が支持する候補が分かれば、トランプ米政権は他方を推す可能性がある。候補者も米中の対立に巻き込まれることを回避すべく、特定の国に肩入れしていると受け止められないよう注意を払っているとみられる。
米国は国際機関で中国の影響力が強まることに警戒を強めている。WTOの舞台では、中国が「途上国」と定義されており、貿易の優遇策を受けていることなどを問題視している。米国は20カ国・地域(G20)を先進国とみなす改革案を出しているが、議論は進んでいない。米国は次期事務局長にこうした改革を求めるとみられる。
米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は過去に次期事務局長について「自由経済の国が中国に対処しなければいけないという本質を理解している人が望ましい」と指摘している。
新事務局長は紛争処理の最終審にあたる「上級委員会」の取り扱いについても、米中の支持を取り付ける必要がある。米国は正しい判断を出せる組織ではないとして欠員の補充を拒んでおり、上級委は機能不全に陥っている。
欧州連合(EU)や中国などは1月、暫定的な上訴制度の設置を目指すことで合意したが、米国は加わっていない。
からの記事と詳細
https://ift.tt/3lwL9Lt
世界
No comments:
Post a Comment