広島で話題を集めている、お寺にある「ハンバーガーの自動販売機」。ハンバーガーにおみくじがついているという意外性もあって、1日に100個以上売れたこともあったという。400年以上の歴史がある広島市中区の日蓮宗・本覚寺の境内に設置されている。渡部公友住職(51)は「広島のランドマークにしたい」と意気込むが、その言葉の裏には住職の熱い思いが込められていた。
境内に自販機設置
自販機のメニュー(取材時)はチーズ入りや広島ならではのお好み焼き風、ピザバーガーなど6種類のバーガーに大判焼きも。300~350円と手頃な価格だ。
近所の人だけでなく、郊外から車でやってきては「面白そうだったので、おやつに食べようと買いに来た」と購入する家族連れもいる。「面白いし、楽しい」と子供は大喜びだ。
箱に入った冷蔵バーガーは持ち帰って温めて食べてもらう。カレーチーズバーガーを自宅に持ち帰って食してみたが、パテは思った以上に肉厚で、食べやすいやわらかさ。カレー風味が食欲もそそり、1分かからず食べ終えた。
バーガーには寺ならではの特徴がある。本覚寺の守護神、妙見大菩薩をモチーフにした公式キャラクター「みょうけんくん」が描かれたカラー印刷のおみくじが箱に付いている。
渡部住職が手作業で貼り付けているというおみくじは忖度(そんたく)なしで、しっかり「凶」も入っている。
子供食堂の運営資金に
自販機は渡部住職が個人事業として1月末、境内に設置した。一時期は1日に100個以上出たこともあり、バーガーの追加を1日に4、5回行っていたことも。「ちょっと反響がありすぎで、私自身がついていっていない」と渡部住職も驚く人気ぶりだった。
昨秋、温かいバーガーを提供していた昭和時代のレトロな自販機が壊され、その後、3Dプリンターで部品が復元されて復活したというニュースを知ったのがきっかけだった。
バーガー自販機は全国的にも珍しく、「私が自販機でバーガーを買いたくなった」。自ら探して、長野県飯田市の業者から自販機を購入。渡部住職が商品管理や発注も全て行っている。
最大の目的は、売り上げの一部を子供食堂の運営資金に充てることだ。本覚寺では月1回、子供50円、大人200円で食事を提供し、毎回80~90人分を用意している。助成金と個人からの寄付で賄っているが、「新型コロナウイルス下で支援を必要とする子供たちは増え続けている」という。
「子供食堂は何としても続けていきたい」と渡部住職。今後も継続していくために、「子供食堂を支えるツールになれば」という思いがある。
寺も個性を
これからの「寺の環境づくり」もある。
本覚寺の開創は天正18(1590)年。広島城築城に伴い、慶長5(1600)年に旧吉田町(現・安芸高田市)から現在の場所に移転したと伝わる。
原爆が投下された昭和20年8月6日、爆心地から約550メートルに位置する本覚寺は全壊全焼。当時の住職一家は亡くなり、その後、渡部住職の祖父が再建した。境内にはいまも被爆した鳥居やこま犬などが残る。
広島の夏祭りは「とうかさん」が有名だが、戦前には「妙見まつり」がにぎやかに行われ、地域の人々に親しまれていたという。
妙見大菩薩は開運や勝利などの神として、地域の人々の心のよりどころとして大切にまつられてきた本覚寺の守護神。毎年6月1日に開帳されている。よろいをまとって、右手で刀を頭上に構え、本覚寺の公式キャラクターにもなっている。
だが、時代の流れや少子高齢化で檀家(だんか)は減少。コロナ下での外出自粛も重なって法事や参拝者は少なくなり、寺の運営は課題となっている。バーガー自販機があれば、だれでも気軽に立ち寄れる。寺が多くの人に親しんでもらえるきっかけにもなると考えた。
渡部住職は「寺も個性を打ち出し、地域が少しでも明るく、楽しくなるきっかけになれば」と話していた。(嶋田知加子)
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