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Tuesday, November 1, 2022

【コラム】日本のメガバンクより高給、米バーガー店勤務-リーディー - ブルームバーグ

simpangsiuur.blogspot.com

1840年代、富を築こうとする何万人もの移民が金(ゴールド)を求めてカリフォルニア州に殺到した。次に同州に引き付けられるのはファストフードチェーンで働きたい日本の若者かもしれない。

  新しい法律によってカリフォルニア州のファストフード店で働く人の時給は近く22ドルになる可能性がある。これは今のレートで3300円付近で、日本の 最低賃金の3倍以上だ。

  米ファストフード店で週40時間働いた場合の月額は、日本で一流大学を出てメガバンクに就職した人が期待できる初任給の2倍になる。日本のメディアのあるキャスターは、これでは日本で働くのがばかばかしく見えるとコメントした。

  この現象を引き起こしたのは歴史的な円安ではない。円安は格差を大きくしただけだ。インフレ加速と為替相場のおかげで、働き者とされる日本の労働者は国際基準に照らして甚だしく低賃金だという事実が明るみに出た。

Stalled Salaries | Average Japanese wages haven't budged much in three decades

  これは日本経済の失われた数十年と、労使双方の保守的な選択の結果だ。日本の平均賃金はこの30年間、ほぼ横ばい状態にあり、経済協力開発機構(OECD)平均を大きく下回っている。企業がコスト削減に夢中になり巧みにもなったおかげで、手元資金と利益率は急上昇している。

Below the Average

Japan's wages trail those of developed countries when measured in dollars

Source: OECD

  しかし、円安の影響が物価に波及し、今や勤労者の実質所得はかつてなかったほどに圧迫されている。アップルは今年の「iPhone(アイフォーン)」新モデルの米国での価格据え置きをアピールしたが、日本の消費者はアイフォーン14に昨年モデルに比べて20%以上多く支払うことになった。予想通り、日本でのアップルの売り上げはここ数年で最悪の部類となっている。

  こうした中、若者が機会を求めて海外へ向かい頭脳が流出するリスクが懸念されている。逆に、日本が海外から誘致しようとしてきた医療や建設関連の労働者は、日本での賃金を自国の通貨に換算してみて日本はそれほど魅力的でないことに気づくかもしれない。

  現在のインフレの中ですら、企業は依然として、輸入が大半を占める原材料費の増加分を消費者に転嫁するのではなく、ほとんど吸収することを選択している1600以上の企業を対象にした帝国データバンクの調査によると、企業はコスト100円増に対して平均36円60銭しか顧客に転嫁していない。日本は多くの業界で競争が極めて激しく、新型コロナウイルス禍からの回復も不完全な今、多くの企業は値上げをすれば顧客が競合他社に流れると心配している。

  もちろん、日本のインフレ率が相対的に低いままであることは消費者にとって朗報だし、株主には日本企業がひねり出した利益率上昇は歓迎される。

  ただ、その100円のコスト増の残り63円40銭をどうにか賄わなければならない。そのために、労働者が手にする賃金が減ることになる。また下請け業者に圧力をかけて値引きを強いる陰湿な慣行にもつながる。

Left Behind

While Japan's wages have flatlined, those in other OECD countries have risen

Source: OECD

  日本銀行は10月28日、インフレ環境下で企業が賃金をどのように設定するかについて高い不確実性に言及した。ここ30年にはなかった状況なので無理もないことだ。

  日本労働組合総連合会(連合)は来年の春闘で5%の賃上げを求める方針だが、仮に企業がこれに同意したとしても、加盟組合員は約700万人に過ぎず、大きな影響にはならない。春闘はここ30年、ほとんど流れを変えることはできなかった。

  対処が必要なのはもっと根本的かつ構造的な問題だ。

  労働力流動化が高まらない状況や正社員と非正規社員との格差、高い技能を持つ労働者すら入社時の賃金が安いことなど、とっくに有用性を失った雇用システムの名残だ。

  しかし、これらを是正する取り組みは非常に不人気である公算が大きい。労働者の賃金がこれほど低い主因は企業側が従業員を解雇するのが信じられないほど難しいことだ。労働改革では雇用の流動性を得るために雇用の安全を犠牲にすることが避けられないだろう。高いスキルのある人やリスクを取る意欲に報いる方向に大きくかじを切れば、経済的格差を拡大させることは必至だ。日本は低成長の中でもおおむねそれを回避してきた。犯罪が少なく街がきれいなのはこの理由が大きい。

  円安にもかかわらず、日本の若者が母国の多くの利点を捨て、ロサンゼルスで「ポテトも一緒にいかがですか」と客に問い掛けるとは考えにくい。しかし、これからさらに30年間、賃金が横ばいだとしたらどうだろう。誰にとってもうれしくない未来だ。

(リーディー・ガロウド氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストです。このコラムの内容は必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題: Better to Flip Burgers Than Work at a Megabank: Gearoid Reidy(抜粋)

This column does not necessarily reflect the opinion of the editorial board or Bloomberg LP and its owners.

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