辛味は味覚じゃないのか
普段何気なく感じている食べ物の「味」。
味覚には甘味や酸味などの種類があるというのは広く知られている話ですが、なかには「真偽はわからないけど聞いたことはある…」というような話も多いですよね。
というわけで今回は、よく耳にするけど真実かどうかは意外と知らない、味覚についての4つの噂を検証しました。
その1 辛味は味覚に含まれない?
A 本当
生理学的にいうと、辛味は味覚に含まれません。人間が舌で感じることができる味覚は「甘味・塩味・酸味・苦味・うま味」の5種類とされています。
人間の舌の表面には「味蕾」という器官が無数に存在していて、味覚をキャッチする役割を果たしています。食べ物や飲み物を口に入れると味蕾の中にある味細胞が刺激され、受容した味物質の情報を神経を通じて脳に伝達することで、「味覚」として感知しています。
では、あの「辛い」という感覚の正体は何なのでしょう?
実はあれは味覚ではなく、「痛覚」または「温覚」なのです。
「辛味」は、トウガラシに含まれるカプサイシンやコショウに含まれるピぺリンなどの物質が舌の受容体を刺激することで発生します。その時に感じる「熱くて痛い」(または「冷たくて痛い」)という感覚が「=辛い」になっているのです。
熱すぎるものや冷たすぎるものに触れた時、皮膚が「痛い!」と思うことがあると思いますがそのようなイメージですね。
また、辛味は大きく分けて2種類のタイプがあり、トウガラシ・コショウなどヒリヒリ熱い「ホット系」と、ワサビ・カラシなどツーンと来る「シャープ系」に分類されるのだとか。
ちなみに生理学的には「渋味」も味覚に含まれませんが、辛味も渋味も料理の味や個性を出すための大切な要素といえるでしょう。
参照:https://www.japa.org/tips/kkj_1106/
https://allabout.co.jp/gm/gc/386512/
その2 甘いものには薬物並みの依存性・中毒性がある?
A 本当
砂糖依存症(シュガージャンキー)という言葉を知っていますか?
米国がラットを用いた研究によると、砂糖の入った甘いものには薬物やアルコール並みの依存性・中毒性があることがわかっています。
【砂糖依存症のメカニズム】
ストレスや疲れから甘いものを口にする
→ドーパミンやセロトニンが分泌され脳が「幸せ」と感じる
→血糖値が下がりイライラする、または日常的なストレスを受ける
→気分を良くしようとして甘いものを口にする
砂糖は「マイルドドラッグ」という別名を持ち、甘いものを食べないとイライラする、食後いつも急激に眠くなる、などは砂糖依存症や糖質中毒の症状である可能性があるといいます。
砂糖依存症になってしまうと、糖質過多により身体に様々な弊害が起こります。糖尿病や高血圧などの健康被害以外にも、うつ病や虫歯になりやすくなったり、怒りっぽくて攻撃的な性格になることなども指摘されています。
また、砂糖依存症の原因はなにもスイーツやお菓子に限ったことではありません。糖質が多く含まれるパンや飲み物、加工食品なども注意が必要です。
ケーキは好きじゃないけどジュースやジャンクフードは日常的によく口にしているという人は、いつも自分がどれくらいの糖質を摂取しているか改めて確認してみると良いかもしれませんね。
参照:
https://www.mrso.jp/colorda/medical/3115/
その3 10歳までに食べたもので将来の味の好みが決まる?
A 諸説あり
諸説ありますが、人間が最も味覚に敏感なのは生まれた時で、離乳食がはじまる頃になると少しづつ鈍化し、3歳くらいまでに味覚の土台が形成されるといわれています。
「子供の味覚を育てるには3歳まで!」という声もありますが、食事をする環境なども含めて10歳~12歳くらいまでの食経験が重要という意見も多く、現時点で明確な答えは出ていないようです。
また、幼少期にあまり味の濃いものを食べ過ぎない方が繊細な味覚が育つといわれています。これは、味の濃い物を食べ過ぎると受容する味蕾が摩耗してしまうことや、強い味に意識が向くためにその他の繊細な味付けをキャッチする能力が育たないことなどが理由といわれます。
地元や親元を離れてから味の好みがガラッと変わる人などもいるので何ともいえませんが、少なくとも味覚のベースは幼少期に作られるということがいえそうですね。
ちなみに味覚の話からは逸れますが、成長期の食事内容や食経験がその後の学力・運動能力の発達や健康的な心身に関わるという専門家は多いです!
参照:https://www.yamaki.co.jp/katsuobushi-plus/news/202202_mikakukeisei/
https://www.atpress.ne.jp/news/253417
https://www.nyusankin.or.jp/wp/wp-content/uploads/2019/12/Nyusankin_504_b-1.pdf
その4 歳をとるにつれ味を感じる力が鈍くなる?
A 本当
「子供は大人よりも味覚が敏感」という話を聞いたことはありませんか?これは、味を感じ取る「味蕾」の数が大人より子供の方が多いためです。
乳幼児の味蕾は約1万個あり、舌以外に唇や頬の内側にも存在します。これは、赤ちゃんが誤って危険なものを口にしないように備わっている能力ということで、本能的に毒や腐敗物を避けるためなのだとか。
子供のうちの好き嫌いが大人より多いのは味蕾が多く味に敏感だからだといわれています。
成人になると7,500個程度まで減り、高齢者になると乳幼児の3~5割である3,000~5,000個程度まで減ってしまうのだそう。
歳をとるにつれ味蕾の数が減少するのは、高齢者が濃い味を好むようになる(味覚が鈍化する)一因ともいわれます。
参照:
https://www.jstage.jst.go.jp/article/geriatrics/57/1/57_57.1/_pdf
人間の味覚はまだまだ謎がある
味覚が現在の「5味」になったのは明治時代、1908年頃に日本人科学者の研究で「うま味」が発見され世界に広まりました。つまり、明治時代以前まではうま味は認識されておらず、4味のみが味覚だと思われていたのです。
以前は常識のように思われていた「味覚地図」も、現在は誤りとする説の方が一般的になっていますよね。
まだまだ謎が多い人間の味覚については、今後も新たな発見や噂が絶えない分野といえそうです。
文/黒岩ヨシコ
編集/inox.
からの記事と詳細 ( 「辛味」は味覚に入る?入らない? 味にまつわる4つの噂を検証| - @DIME )
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