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Sunday, August 14, 2022

健康長寿で有名な京丹後の人々の特徴的な食生活 京都府立医科大学・内藤教授に聞く|ウートピ - ウートピ

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人生100年時代。もしも100歳まで生きるとしたら、どんな自分の姿を想像するでしょうか。もしかしたら、「そこまで長生きしたくない」と思う人もいるかもしれません。

それは「健康」が失われて働き方や生き方に希望がもてないからではないでしょうか。もしも、元気に歳を重ねていけたら——。最近は、生命科学のさまざまな研究から「老いは病気」「病気ならば治せる」といった可能性が見えてきました。

健康に美しく生きるために、最先端の研究を学ぶYoutube番組「生命科学アカデミー」は、このたび腸内微生物・消化器・抗加齢医学を専門とする内藤裕二先生をゲストにお迎えし、「腸内環境」と健康についてたっぷりと解説していただきました。

※本記事はYoutubeチャンネル「生命科学アカデミー」で6月30日(木)に配信された内容を、ウートピ編集部で再編集したものです。

特徴的な「京丹後」の食生活

——内藤先生が実施されている、健康長寿で有名な京丹後市での研究が、とても気になっています。内容を具体的に教えてください。

内藤:京丹後市には長寿の人が大勢います。その秘密を探るため、5年前からさまざまな研究を進めてきました。例えば、65歳以上の全員を対象にCT画像を撮ったり、採血をしたり、普段の食生活を徹底的に調べたり。加齢によって心身が衰える「フレイル」や、筋力が衰える「サルコペニア」についても毎年調査を実施しています。この研究の結果が出るのは、おそらく10〜20年後になるでしょう。

現在わかっていることは、食生活が非常に特徴的だということです。

京丹後の人々は、豆類、根菜類、芋類などの食物繊維や、植物由来の食物繊維を多く摂取しています。また、主なタンパク源は魚や豆類で、牛肉や豚肉などの動物性タンパク質はあまり食べていません。これが長寿の秘訣なのではないかと、私は考えています。

また、研究を進めた結果、私たちは京丹後で(腸内フローラを健康な状態に保つために働く)「酪酸産生菌(らくさんさんせいきん)」を発見しました。この菌について、日本の基礎研究者の先生方が酪酸産生菌に関する有力な研究結果を出されましたので、ある意味、私たちと“合わせ技”で認知が広がったというところです。

食物繊維を摂らなくなった日本人に危機が…?

内藤:日本人は最近特に、食物繊維の摂取量が減ってきています。これが健康上よくないということは、世界的な研究データを見れば明らかです。食物繊維の摂取量が少ないと、がんや心臓の病気、糖尿病が増え、死亡率が上がります。しかし残念なことに、世界中で日本人だけが、食物繊維の摂取量が下がっているのです。

——日本の食文化が変わってしまったのでしょうか?

内藤:その通りです。現代の日本人は、甘いものや脂っこいものを頻繁に食べているように見受けられます。食習慣がこんなに変わった人種はいないのではないか、と思うほどです。今から50年後、100年後の日本人が元気で過ごしているかどうか、というのは非常に疑い深いですね。

——先生もご心配されているんですね。

内藤:しかし健康や長寿について、食生活のデータだけで判断を下すのは難しいため、私たちは科学的・医学的根拠を探すための調査を始めました。そのときに目をつけたのが、腸内細菌です。

腸内細菌のエサになるのは…

内藤:腸内細菌の研究を始めてまだ5〜10年ほどですが、この短期間でさまざまな事実がわかってきました。お腹のなかにいる腸内細菌は、人が定期的に食べ物を食べてくれるため、それをえさにして生きていくことができます。

このとき、腸内細菌がえさとして食べられるのは、人が消化できない食物繊維だけ。砂糖や炭水化物は人が消化して自分の栄養源にしてしまうため、大腸にいる腸内細菌には届きません。だから、食物繊維を摂りましょうと言っているのですが皆さんなかなか摂ってくださらない……。

——すみません(苦笑)。

内藤:ちなみに、腸内細菌はお礼として、ヒトに役立つものを生み出し、恩返しをしてくれます。私たち人と腸内細菌は、ともに助け合って生きているのです。それを共生と言います。

筋肉量の維持に必要なのは、肉と魚どっち?

——タンパク質についても教えてください。京丹後の人々の食生活をお手本にするならば、やはり牛や豚などの肉よりも、魚を積極的に食べたほうがよいのでしょうか?

内藤:タンパク質については、今まさに熱い議論を交わしているところです。筋肉量が低下する「サルコペニア」を予防するため、今まで多くの医師が肉を食べるよう患者に勧めてきました。しかし、この考え方が間違っているかもしれないのです。

筋肉を作るためにはアミノ酸が必須ですが、それが動物性由来である必要性はありません。私としては、植物由来のアミノ酸のほうが我々日本人の腸内細菌にはマッチしているのではないかと考えているわけです。

参考までに、京丹後の人々の筋肉量と先ほど話に出た「酪酸産生菌」について調べたところ、2つが相関関係にあることがわかりました。だから、京丹後の人々は肉を食べなくても筋肉量を維持することができているのです。

世界に目を向けると、肉を全く食べずに筋肉を維持している人々が大勢います。例えばパプアニューギニアの人々は、さつまいもを食べて筋肉量を維持しています。

腸内細菌には、まだまだ多くの秘密がありそうですが、一つ言えるのは、人の食事の影響を受けて腸内細菌が形作られているということです。「何を食べるか」ということが、非常に大切だということを、ご理解いただければ幸いです。

バングラデシュの子どもを救った豆類とバナナ

——もう一つ、先生が著書に書かれていた話のなかで、詳しくお聞きしたいことがあります。バングラデシュの子どもたちを生命科学で救ったということですが、どのようにして命を救われたのでしょうか?

内藤:バングラデシュには、肉体的にも精神的にも順調に成長することができない子どもたちが大勢いました。そこでアメリカを中心に世界中のさまざまな研究者が、その理由を探るための研究を行いました。中には腸内細菌の研究者もいたんです。すると、腸内細菌が鍵になることがわかり、なおかつ肉ではなく豆類とバナナが成長を促す重要な食べものになることが判明したのです。この研究結果は、歴史に残る大発見として世界で話題になっています。

この研究をきっかけに、子どもたちの成長に必要な栄養が作られるようになり、救われる子どもたちも増えました。そう考えると、この5年間、腸内細菌の研究が何に貢献したかというと、バングラデッシュの子どもたちが元気になった。これが一番大きな貢献だったと僕は思います。

<この回のまとめ>
・京丹後の人たちの食事は、食物繊維や魚・豆などのタンパク質が豊富で、肉が少ないという特徴がある
・食物繊維が少ない食事をしていると心臓の病気やがん、糖尿病が増え、死亡率が上がる

(第4回に続く)

■動画で見る方はこちら

内藤裕二 京都府立医科大学 大学院医学研究科 教授 昭和58年京都府立医科大学卒業,附属病院研修医 平成13年米国ルイジアナ州立大学医学部分子細胞生理学教室客員教授 平成17年独立行政法人科学技術振興機構科学技術振興調整費研究領域主幹 平成21年京都府立医科大学大学院医学研究科消化器内科学准教授 平成27年本学附属病院内視鏡・超音波診療部部長 令和3年大学院医学研究科生体免疫栄養学講座教授〜現在に至る 専門:腸内微生物叢、抗加齢医学、消化器病学

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